気象研究ノート 「マルチパラメータレーダ」

編集: 真木雅之(防災科学技術研究所),V.N. Bringi(コロラド州立大)

 

近年,マルチパラメータレーダ(偏波ドップラーレーダ)が開発・実用化され,定量的降水量推定や降水の微物理過程の研究が大きく進展している。国内では,いくつかの大学や研究機関でマルチパラメータレーダを導入した研究が進められている一方で,2010年には,3大首都圏と主要地方都市で都市型水害を対象とした現業用マルチパラメータレーダネットワークの運用が開始される。このような中,大学,研究機関の研究者,大学院学生や,民間企業の技術者からはマルチパラメータレーダに関する専門書を望む声が聞かれる。しかしながら,日本気象学会では、第200号(2001年)のドップラー気象レーダー(編集 石原正仁)以来,レーダに関する気象研究ノートは出版されていない。上記の理由からマルチパラメータレーダ特集号の出版を提案する。

編集期間は2年程度を予定している。編集に当たってはこの分野の第一任者でありPolarimetric Doppler Weather Radar (Cambridge University Press, 2001)の著者であるBringi教授に助言をいただく。各章あるいは節の執筆者は、大学や研究機関において、レーダ気象学・水文学、レーダ電気工学を専門とする研究者を予定している。なお、衛星リモートセンシングに関しては扱わない。

 

対象:研究者(気象学),レーダ技術者,大学院生(気象学,水文気象学)

方針:

    参考文献を充実する。

    基礎編(第1章~第3章)と応用編(第4章~第9章)を明確にする。

    可能なら付録にレーダ関連プログラム(データ読み込み,表示など)を付ける。

    各章に編集担当者を設ける。

 

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参考:

これまで出版された気象レーダに関する研究ノート

90号 (1967) 気象レーダー特集号,243ページ。

112号(1972) 気象レーダー特集号,小平信彦・立平良三,171ページ。

139号(1980年)気象レーダー特集号,144ページ

200号(2001年)ドップラー気象レーダー,石原正仁,216ページ。

 

気象レーダに関する国内外の書籍

Battan, L.J., 1973: Radar Observations of the Atmosphere, University of Chicago Press, Chiago, 324pp.

Collier, C.G., 1989: Applications of Weather Radar Systems, A Guide to Use of Radar Data in Meteorology and Hydrology. John Wiley & Sons, New York, 294pp. 

Doviak, R.J. and D.S. Zrnic, 1993: Doppler Radar and Weather Observations, Second Edition. Academic Press, San Diego, 562pp. 

Sauvageot, H., 1991: Radar Meteorology, Artech House, London, 315 pp.

Rinehart, R.E., 1997: Radar for Meteorologist, Rinehart Publications, North Dakota, 428pp. ISBN0-9658002-0-2.

Bringi, V.N. and V. Chandrasekar, 2001: Polarimetric Doppler Weather Radar, Cambridge Univ. Press, New York, 636 pp. 

吉野文雄、2002:レーダ水文学、森北出版(ISBN4-627-49511-0).

Meischner P. (ed), 2004: Weather Radar: Principles and Advanced Applications, Springer, 337 pp.

深尾昌一郎・浜津享助、2005:気象と大気のレーダーリモートセンシング、京都大学出版会、479pp

Silas, M. (ed), 2008: Precipitation: Advances in Measurement, Estimation and Prediction, Springer, 540 pp.