気象レーダによる噴煙の実態解明と火山防災

桜島は、20092月以降、爆発的噴火が急増しており、2011年には観測史上最多の966回を記録した。噴火の急増に合わせて、鹿児島市内の降灰量も急増しており、2012年は鹿児島地方気象台における降灰量が3,500g/m2を超えた。鹿児島市街地に降る大量の火山灰(ドカ灰)は、鉄道や道路等の交通機関を麻痺させるなど大きな影響を与えるため、早期の復旧作業が必要となる。噴火後、迅速に復旧作業を進める際、降灰量や火山灰が降り積もった範囲を把握することが重要となるが、現在、リアルタイムに降灰分布を把握手段がない。そこで本研究により、通年稼働している気象レーダを用いたリアルタイム降灰量分布情報の開発や降灰予測の高度化を検討する。本研究の成果は、国内外にかかわらず、気象レーダの観測範囲内に位置する活火山への適用が可能である。

目的

国内外にかかわらず、気象レーダの観測範囲内に位置する活火山を対象とし,通年稼働している気象レーダを用いたリアルタイム降灰量分布情報の開発と降灰予測の高度化をはかることを目的とする。

研究内容

本研究の具体的な検討項目は以下の(1)(3)3点である。桜島における多数の噴火事例を用いて、項目(1)の検討を行う。また、気象レーダでは観測できない火山灰を補完するため、項目(2)の検討を行う。項目(3)では、気象庁の降灰予報への応用や鉄道事業者等への提供を考慮した検討を行う。各項目の概要は以下のとおりである。

1)気象レーダにより検知されている火山灰の実態解明

 火山の噴火直後に気象レーダで火山灰が検知されることは確認されているが、検知されている火山灰がどのような粒径分布や形状をしているかといった基礎的かつ重要な事項が解明されていない。本研究では、桜島島内で地上降灰量調査を行い、火山灰の粒径分布や形状を把握した上で、XバンドMPレーダ観測値(レーダ反射強度や偏波パラメータ)と地上降灰量の観測値を用いて、気象レーダにより検知されている火山灰の実態解明を行う。 

 

2)地盤変動観測データから推定した噴出量を用いた降灰予測

 現在、一般的に降灰予測に用いる噴出量は、「火山噴火災害危険区域予測図作成指針」(国土庁,平成4年)で示されている噴出量と噴煙柱高さの関係式を用いて算出しているが、誤差要因と一つとなっている。本研究では、地盤変動観測データから求めた噴出量を用いた降灰予測を行い、地上降灰量を用いて予測精度を検証する。

 

3)気象レーダを用いたリアルタイム降灰分布把握手法の確立

 桜島を観測範囲に含む気象レーダは、桜島XバンドMPレーダ、国見山Cバンドレーダ、種子島Cバンドレーダ、鹿児島空港レーダの4基が該当する。項(1)の検討結果を踏まえ、これらの気象レーダを用いて、これまで確立されていない迅速に降灰量分布を把握する手法を開発する。なお、本研究の成果が、気象庁の降灰予報や鉄道事業者の運行管理へ活用されることを念頭に実施する。