科学研究費助成事業(科学研究費補助金(基盤研究A))の採択課題「3次元噴煙モデルとレーダー観測による火山灰拡散降下モデルの高度化」(2012年~2016年度 研究代表者:小屋口剛博 東大地震研究所)の研究課題3「レーダ散乱特性の抽出」で実施している研究内容を紹介します。
これまで,国交省や気象庁で用いられてきたレーダーは,雨雲などの気象観測を主な目的としていた.従って,本研究においては,火山噴煙と雨雲を識別することが当面の目標となる.具体的には,大気中の火山灰粒子と雨滴・氷(その他のエアロゾル)の散乱パラメータ・粒径分布の違いを考慮に入れたレーダー散乱特性のシミュレーションを行う.最終的には,「降水時の噴火において噴煙と雨雲を散乱パラメータの違いで区別できるか」,「火山灰粒子の空中における粒径分布に対して制約条件を与えることができるか」という問いに答えることを目標とする.
1.桜島噴火監視・データ表示システム
・爆発的噴火時の気象レーダデータの収集
桜島の爆発噴火時の垂水XバンドMPレーダデータを収集しデータベース化する。
・噴煙のレーダ表示システムの製作
爆発的噴火時の偏波レーダパラメータを表示するためのプログラムを作成する。
2.火山灰の基礎的散乱特性
・火山灰の散乱計算プログラム
火山灰の偏波レーダパラメータを計算するために、Tマトリックス法を用いた散乱計算プログラムを作成する。
・火山灰の粒径分布特性
パーシベル等による降灰の地上観測により,散乱シミュレーションに必要な火山灰粒子の特性(粒径分布や形状等)を明らかにする。
・散乱シミュレーション
気象レーダに用いられているCバンド,Xバンド,Kaバンド波長について散乱計算をおこない,各波長毎の火山灰の偏波レーダ散乱特性を明らかにする。
3.散乱特性の火山灰の定量的推定への利用
・火山灰粒子の散乱シミュレーションに基づく定量的推定式の提案
真木雅之 (鹿児島大学)
前坂 剛 (防災科学技術研究所)
小園誠史 (東北大学)